最近では見る機会がほとんどなくなった家具「スーツハンガースタンド」のご修理依頼がありました。十数年前にアメリカ赴任時に購入した想い出の商品なので、なんとか修理してほしいと安田屋家具店にお持ち込みになられました。
早速四代目が修理箇所を確認すると、上部のハンガー部分が台座から外れてしまっていました。支柱とハンガーはダボで接合してある構造でしたので、修理可能であることをお伝えしたところ、お客様はホッと安心されたようでした。
奥様から「1本ビスが外れている部分があるようなんですけど…」とお話しされたので、四代目は「ご安心ください。破損個所だけでなく、すべての接合部分を点検しておきます」とお伝えしたのでした。
安田屋家具店内の修理作業場に「スーツハンガースタンド」を移動させ、じっくりと構造を確認した後、一度分解することにしました。 元々は組み立て家具だと思われ、ほぼすべての接合個所は六角ネジで接合するようになっていました。なので簡単に分解することができました。
再組立て時に重要なネジを無くさないように箱に保管する四代目です。 また各部品の方向が組み立て時に分かるように印をつけておきました。意外ときめ細かな神経を持ち合わせている四代目なのです。
各接合部に異常がないことを確認した四代目は、元通りに組み立てます。 ハンガーと支柱を接合するダボが途中で折れてしまっていました。そこでドリルを使用して慎重に埋まっているダボ木を取り除く作業を行いました。
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接合時にダボで止めるだけでなく、接着剤を使用して外れないようにするため、支柱上部の断面についている古い接着剤をヤスリを使用して取り除きます。古い接着剤を取り除かないと、接着面同士が密着しないのでとても重要な作業となります。
お客様が用意されたダボ木では、直径が小さくまた長さも短いため使用できませんでした。安田屋家具店のダボでは直径が少し大きかったので、削って調整しました。 支柱側のダボ穴に接着剤を入れてからダボ木を打ち込みます。次にハンガー側のダボ穴に接着剤を入れてから、支柱側のダボ木をハンガー側のダボ穴に入れ込みます。 ゴムづちでたたいてダボをしっかりと両方のダボ穴に入れ込みます。
そしてここがプロの極意。
圧着固定具を使用して、ハンガーと支柱を締め付けます。
この作業で接着剤がより強く接着するのです。そのため耐久性がグンと良くなります。まず接合部が外れることはないでしょう。 一般の方は圧着固定具を持っていないので、圧着固定作業ができません。そのため接着力が弱いんです。この違いがプロの技です。
しかし今回の場合、ハンガー部分が湾曲しているため、写真のような通常の方法では圧着固定具が直ぐに外れてしまいます。四代目も苦戦しましたが、補助具を使用してしっかりと固定させることができました。 どのような方法で行ったかは、、企業秘密です。
翌日、圧着固定具を外し、所々塗装が剥げている個所を修正塗料で色付けをして完成させます。
大切な想い出が刻み込まれた「スーツハンガースタンド」がよみがえりました。
新しいお客様宅の想い出と歴史を刻み込まれ、親から子へ、子から孫へと代々受け継がれていく「スーツハンガースタンド」になることを願う四代目でした。
今回のご修理費用は税込5,000円でした。
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