M様からかなり古い曲木椅子の座面に張ってある籐シート材の張替に関してお問い合わせがありました。ここ最近、籐シート張替依頼が多くなっているように思います。参考になれば幸いです。
M様からお問合せ
はじめまして。 古い椅子なのですが、予算にかなえば修理して使用したいと考えています。 修理を要するのは、背の曲木の外れも含みますかが、これは当方でも可能かとも思います。 お見積もり頂かますか?
座面サイズは、ヨコ37cm、 タテ38cm。 ただ藤シートそのものはその内側9ミリ位 になります。
安田屋家具店からのご返信
座面シートが天然籐材の手編み仕上げの椅子は現在全く生産されていない貴重な椅子です。曲木で籐シート座面の椅子は軽くで丈夫です。しかし20年ほど前から籐材の品質が落ちてしまい、籐シート材の耐久性が低くなったために座面が籐シート張りの椅子の生産はされなくなりました。生産してもすぐに破れてクレーム対象となるからです。
そのため最近はほとんど見かけません。
写真を確認すると現在の座面シートは「手編み仕上げ」です。強度が一番高い編み方です。
現在と同じ手編み仕上げでの張替もできます。
また金額的に手編みよりも安価にできる仕上げ方法もあります。
現在と同じ「手編み仕上げ」で張替えた場合、1脚税込74,000円となります。カゴ目のサイズは現在と同じ穴の大きさで「五分カゴメ編み」となります。無着色・無塗装の生地仕上げです。
現在の座面も元々は無着色・無塗装の生地仕上げでしたが、年数の経過でアメ色に変化した色となっています。
次に手編み仕上げが高価な場合に、張替費用を安価にする方法をお知らせします。一般的な椅子座面の籐シート張り仕上げに使われる「溝決め込み仕上げ」方式に変更して張替する方法です。
これは椅子座面の木部渕周りに現在は手編み仕上げのための籐材を1本1本差し込むための穴が点々と開いています。
この穴の部分に溝を彫ります。
椅子座面全体に五分カゴメ編み籐シート材を乗せた後、籐材の丸芯材を籐シートの上に乗せて、座面木部渕周りに開けた溝に籐シートと一緒に叩き込んで入れます。この時に接着剤を入れますので外れることはありません。
この「溝決め込み仕上げ」方法に加工変更して張替える場合、1脚税込23,000円です。
溝決め込み仕上げに改良した後は、何度でも同じ仕上げ方で張替えることができます。尚、手編み仕上げの強度を100とすると、溝決め込み仕上げの強度は50となります。
強度を増すためには、座面裏側に籐皮を撚った籐バンドで「十文字補強」または「井桁補強」を入れる事をお勧めします。
十文字補強
井桁補強
「十文字補強」の場合は強度が50増しますので、溝決め込み仕上げ50+十文字補強50=100となり、現在の手編み仕上げと同じ強度となります。
今回の椅子は座面サイズが大きくないので「井桁補強」は必要ないと考えます。強度を増すのであれば「十文字補強」で十分
です。「十文字補強」は別途費用が必要となります。
1脚税込5,000円が追加で必要となります。
したがいまして合計金額は23,000円+5,000円の合計28,000円となります。
尚、次回張替時は溝加工や十文字補強費用は必要ありませんので、1脚税込15,000円前後で張替ができます。初回のみ補強仕上げ費用が掛かります。
曲げ椅子で座面が籐シート材はとっても軽い椅子です。しかし籐材の品質が悪化したため、現在では座面籐シート材の椅子はまったく作られていません。そのためとっても貴重な椅子です。ぜひ張替をご検討ください。
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