安田屋家具店

６月５日に届いた手紙の中の１通が目にとまった。
「法律事務所」の文字に、????　なんだぁーと思ったわけです。

差出人名を見ると「川東法律事務所」
そして「破産者　株式会社森繁」、「破産管財人 弁護士 川東祥次」と明記してあった。

えっえっえっ!!!
なになになに????
株式会社森繁って、高松のあのモリシゲ???

戸惑う四代目。

昨年１２月と今年１月に安田屋家具店として久しぶりにモリシゲ商品を販売したばかりではないか。あの時は担当の営業マンSさんが安田屋家具店に来店してくれたではないか。

確か３月にも来店してくれた記憶があるが、いつも通りのSさんだったけどなぁー。会社が悪い状況になっているなんて話は無かったなぁー。そんなことは話さないか。

いやぁー、まったく知らんかった。
あの「モリシゲ」が破産するなんて、夢にも思わんかった。

とり急ぎ、手紙の内容を確認する。
破産者株式会社森繁は令和５年４月２０日午後０時、高松地方裁判所において破産手続き開始決定を受け、当職が破産管財人に選任されています。・・・・・・中略・・・・・・ずは株式会社森繁が貴社に対して販売を委託している商品の存否を確認させていただきたく、ご依頼申し上げます。つきましては、株式会社森繁の台帳の一部を同封させていただきますので、ご確認のうえ、ご一報をお願い申し上げます。・・・・・中略・・・・・貴社におかれましても買取の方のご検討よろしくお願い申し上げます。・・・・中略・・・・・。

つまり株式会社森繁は破産したため、委託商品として安田屋家具店に置いてある商品を買取ってくれという内容ですね。

ただ委託商品といっても、安田屋家具店が欲していて依頼して展示してもらった商品ではなく、時々の担当者が他店の倉庫に預けていた商品を、先方の事情で保管できなくなり、本社に持ち帰ることもできず、近場の安田屋家具店に持ち込んだ商品ばかりです。

セット商品くずれの半端物や、古すぎて時代に合わなくなった商品など、どれだけ価格を下げたとしても販売できないと思われる商品ばかりですので、買取はできませんとの返信を弁護士事務所に送付するのでした。

あの、あのモリシゲが倒産するなんて、いやはやまったく信じられん。少し調べてみた。すると・・・、

1944年に漆工芸品の工房として創業の森繁(モリシゲ)は、1990年12月期にはピークとなる売上高35億3861万円を計上していたが、2015年12月期は売上高約9億円に対して1億3555万円の赤字だったらしい。バブル崩壊後の景気低迷に加え低価格家具メーカーの台頭などにより減収していたとのこと。

金融機関の主導により2017年に会社分割で新会社の「株式会社森繁」を設立し事業を継承した一方、自らは商号を「株式会社ジャクソン」に改称し特別清算の開始決定を受けたそうです。そしてさらに今回の破産手続き開始決定となったようです。

ちなみに「ジャクソン」と聞いて、ははぁーん、と思わなかった人は家具業界人ではありませんね。
「ジャクソン」とは、モリシゲの大ヒット商品名なんです。家具屋歴４１年の四代目は、過去の栄光である大ヒット商品名を会社名としてつけるのは、なんとなくその気持ちわかります。

安田屋家具店と森繁(モリシゲ)との付き合いは相当古いですね。恐らく四代目が生まれた１９６０年代の二代目「甚助」からの取引ではないでしょうか。数多くの森繁(モリシゲ)商品を販売しました。

四代目が安田屋家具店に入社してからは、ソファーなどのリビングチェアーを主に販売していました。「八島」「「ローズベリー」「マリーナ」「アマンダ」「紫舟」「水葉」「アーク」などなど、思い出深い商品名がパッと浮かびます。

安田屋家具店に展示したこれらの商品は、安田屋家具店では売れるのですが、全国的には販売数が少なく、短期間で生産終了する商品が多かったですね。いずれも他工場には無い、洗練されデザインでした。時代を経ても陳腐化しない家具ばかりでした。

その森繁(モリシゲ)が破産するなんて、家具業界人として寂しい限りです。

現在の担当者は、今から３８年ほど前、新入社員だった時に当時の担当者と一緒に来店し、その後数年間安田屋家具店の担当でした。その後は岡山方面の担当者となり、展示会で四代目が高松市内の森繁(モリシゲ)を訪問した時に会う程度でした。

それから年月が過ぎ、営業部長となり、そして再び安田屋家具店の担当者になり、年に数回来店してくれてました。当然今回のことは知っていたことであり、準備はしていたと思うが、最後の挨拶だけはしたかったな。高松に行く機会が有ったら連絡してみようと思う。

また一つ素晴らしい家具工場が無くなってしまった。日本の技術力が一つ減った。

今まで、本当にありがとう森繁(モリシゲ)。