1970年代に流行したヨーロピアンデザインのクラッシックな応接セットの張替えのご希望がありました。今回お預かりした応接セットは、四国・香川県高松市に工場がある「モリシゲ」が製作した『アトラス』という商品です。当時この商品は、安田屋家具店の大ヒット商品だったそうです。当時からいるスタッフが懐かしんでいました。
このデザインの応接セットは、モリシゲだけでなく、マルニ、カリモクなどの名だたる家具工場が、同じようなデザインの商品を製作し、競い合っていました。当時は今のように「リビングセット」ではなく、応接間に置かれる「応接セット」と呼んでいました。現在では応接室そのものが家の中から消滅したことによって、家族団らんの時を過ごすリビングルームに置くので「リビングセット」と呼ばれるようになりました。
当時の応接セットと現在のリビングセットを比べてみると、最大の違いは、横幅、奥行サイズです。とってもコンパクトサイズなんですね。横幅は1800~1900㎜前後、奥行きにいたっては700㎜前後と非常に小ぶりなサイズであったことを実感します。最近のリビングセットは横幅、奥行きともに大きいですからね。お部屋の大きさから考えると、当時のサイズが日本のリビングルームには合っているように最近思います。
今回ご修理する応接セット「アトラス」は、背・座クッションは取り外しができるようになっています。しかし椅子本体も共生地で総張り仕上げになっていますので、少々張替え費用がかかる構造です。座クッション中身は、かなりのへたり具合なので、新しいウレタンクッション材に取替えなければなりません。背もたれクッション材のへたれはあまり無いようなので、現在のクッション材のを芯にしてその周りを新しいウレタン材を巻いて補充します。肘部部の木部の塗装は、はがれている部分がり、張替え時に行なわないと塗替えができなくなるので同時に塗り替えを行います。
使用している生地は合成皮革(ビニールレザー)なので、今回も同種類の生地を使用します。生地の色は、お客様のお部屋のイメージを変えたくないとのご希望で現在と同じダークブラウン色にしました。両肘椅子×2、3人掛けソファー×1脚を安田屋家具店専属の張替え職人の工房に持ち込みました。
お預かりしてから約3週間後、新品にリフォームされた応接セット「アトラス」が届きました。
いかがでしょうか。
とっても美しく仕上がってきましたでしょう。
座クッションの固さもご購入当時の座り心地に戻っています。お部屋の雰囲気も、お客様のご希望通りお預かりする前と変わりません。お客様も大満足でした。お部屋の雰囲気はまさに、応接室というような重厚感が漂っています。
この応接セットは、先代のお父様が安田屋家具店にてご購入いただいた家具です。当時の価格としてもかなり高額な商品でした。そして今回の張替え修理費用は・・・・、
両肘椅子・・・・・・・税込104,000円
3人掛ソファー・・・税込172,000円 でした。
張替え費用としても高額ですが、同ランクの商品を今ご購入されることを考えると、購入費用よりも張替え費用の方がはるかに安価です。ただし中国産の29,800円とか39,800円のソファーと比べると確かに高額な修理費用となります。でも、家具の耐久年数を考えると20年、30年は十分にご使用いただけるので、結局は安価な張替え費用となるんです。
30万円のソファーを張り替えるのも、39,800円のソファーを張り替えるのも修理の手間は同じです。例えば張替え費用が8万円だとすると、30万円で購入されたお客様にとっては買い換えるよりもはるかに安価だと思います。でも39,800円で購入されたお客様にとっては、2脚分買い換えられる金額であり、はるかに高額だと考え、張替えよりも買換えを選びますよね。
そうなんです。
ご購入価格の差=張替え修理費用の差とはなりません。張替え費用は同じなんです。あなたは張替え修理を選びますか、それとも使い捨てる粗大ごみ予備軍としての家具を一生買い換え続けますか。資源にも限りがあることを考えると、その選択に迫られる日が近づいています。