輸入家具の椅子のご修理相談があった。
近くのお客様だったので、早速見に行くと、デザイナーチェアーの雰囲気漂うダイニングチェアーだった。4脚の内の1脚だけ、座ると座面がぐらつくということでした。原因を探るために座面を押してみると、確かに背もたれ側の座面が下に沈み、グラついていることがわかった。
椅子の構造を見てみると、座面板が椅子前部の貫棒の上にのせてありビスで接合してあった。日本国産の椅子でもよくある構造である。次に背もたれ側を見てみると、日本国産の椅子では採用されない構造であった。
座面を固定させるために、背もたれの木部支柱に金属製のL型金具をビス止めで固定し、その上に座面板をのせてビスで固定させてあった。この椅子のデザインからして、座面板を固定させるための方法としてはこの方法でしか座面板を固定することができない。そして肝心の修理の原因を探してみると・・・・、
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座面板を固定するための金属製金具の接合が外れてしまったことで、座ると座面がグラグラと沈み込むことがわかった。このまま使用していると、反対側の金具接合部も荷重に耐えられず剥がれてしまい、座面板が落ちしてまうことでしょう。早期の発見で対処方法は簡単で、修理費用も安価につきます。人間の体と同じですね。早期発見、早期治療です。
座面板を取外した後、金具を椅子木部から取外しました。すると中からプラスチック製の補助板が出てきました。どうやらこの補助板、椅子背もたれが本革製の紐を横方向に編んであるため、金具を椅子支柱に取り付ける際、この革紐の厚みがじゃまになって完全に固定できない。それを解消するために革紐と同じ厚みの補助板をはめ込むことによって、金具を完全に椅子支柱に固定させる苦肉の策のように思えた。輸入家具の構造は、本当に複雑怪奇です。もっとシンプルであればいいのにと思います。
金具以外の修理として、背もたれ部分の革紐が切れてしまっています。その部分を詳しく見ると、切れたのではなく、革紐を斜めにカットして接合してあった箇所が剥がれたようです。座った時に背もたれ部分にも当然荷重がかかるので、ただでさえ切れやすい状態なのに、その部分で接着剤で接合してあるとは・・・・・、耐久性よりもデザイン重視なんでしょうね。そのため背もたれに寄りかかって座る椅子ではないという考え方なんでしょうね。背もたれ部分はあくまでもデザイン的なもので、使用するものではないということです。
金具は、剥がれた箇所を溶接して固定すればいいわけです。また背もたれの革紐は瞬間接着剤で圧着接合を試みてみましょう。耐久性に問題はあるものの、背もたれに荷重をかけなければはがれることはないでしょうからね。
修理法法をご説明して、金具を含めて椅子をお預かりいたしました。安田屋家具店に戻り、直ぐに修理作業のスタートです。
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