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聴神経腫瘍手術体験記9

【実録!聴神経腫瘍との闘い】手術終了3

2011年3月3日~4日は、四代目が聴神経腫瘍摘出手術を東京警察病院で行い、手術が終わった日です。手術をしてから10年以上が経過しました。手術した右 耳の聴神経はやむなく切断したために聴力はなくなり左耳だけでの生活を過していますが、手術前となんら変わりなく元気に仕事もできることに感謝です。あの 時の体験を自分自身に振り返るために再掲載することにしました。毎年何回もお読みいただく皆様にはしばしお付き合いの程をお願い致します。

尚、河野道宏先生は、現在「東京医科大学病院」にて診療を行われています。


これ以降の体験内容はすべて四代目自身の体験です。自分自身の記憶として作成したものです。手術後の状態は千差万別ですので必ずしも同じ状態になるとは限らないことをご理解ください。ただ聴神経腫瘍摘出手術を行う人の何かの役に立てればと思います。

3月3日 夜半~4日朝

 喉の粘膜がくっつく違和感が続き痛い。つばを飲み込もうとしてもつばが溜まらない。鼻水を少しすすってみるがチューブがくっつき痛い。我慢してほんの少しすすって口の中に水分を溜める。口の中にほんのわずか溜まった水分をのどに流す。くっついていた喉の粘膜が流れてきた水分で離れる感じがした。そして痛みも和らいだ。少し呼吸が楽になった。何回も繰り返していくうちに鼻チューブに慣れたのか、知らないうちに鼻呼吸をしていた。そしてウトウトと浅い眠りをむさぼっていた。

 しかし直ぐに意識チェックで起こされる。「今何時がわかりますか。今9時ですよ」の声が時間を聞いた唯一の時であった。ベット右側に大きな時計が置いてあったが近眼なので見えなかった。もうこの時にはすでに時間の観念が無い。どうでもよいことである。

 頭の中で「時間がクスリ、時間がクスリ、あと数時間我慢するだけ」「時間がクスリ、時間がクスリ」と何回も繰り返し念じた。時には数時間前に聞いた曲を口ずさみ耐えた。ぼんやりと天井を眺めると、天井灯が二重に見える。右目、左目が見た画像がそれぞれ独立して見える。片目を閉じれば解決するが、両目で見ると左右それぞれの画像が見えるので物が二重に見える。脳で画像処理がうまくできてないのだろうか。二重に見えることは目を閉じればとりあえず解決できるし、時間の経過とともに治っていくだろうと思った。それよりもめまいや吐き気はまったく感じられないことが助かった。

 しばらくしてふくよかな体型を手術着で身を包んだ布袋様のような見覚えのある顔が見えた。手術説明時に同席されていた医師だ。秋元 康氏に似ていた。マスクをした顔から見える目に笑みを浮かべておられるのが見えた。その笑顔を見て心が和らいだ。癒されるやさしい目であった。辛さも一瞬吹き飛んだ。あの笑顔は今でも脳裏に焼きついて忘れられない。うれしかった。

「大丈夫ですか」
「目を瞑ってみて」
「口をすぼめてみて」
「よーし、大丈夫」顔面麻痺が出ていないか確認して、出ていないことがわかると安心してICUを退出された。時間の観念が無くわからないが深夜であることは間違いない。こんな時間まで手術してたんだと思った。その後、徐々にICUでの辛さもほんの少しづつ和らぎ、ウトウトと浅い眠りを貪っていた。

 どの位の時間がたったのだろう。もう夜は明けたのだろうか。あと何時間経過すればICUから出られるのだろうか。目が覚める度にそんなことを思った。ベット右においてある時計をチラリと見て、もう直ぐ夜が明ける時間であることがわかった。するとパタパタパタと足音。足元に目を向けると河野先生が近づいてくるのが見えた。この時間に来るのは病院に泊まったんだ。何回も気にかけていただいていることに薄っすらと涙がこぼれた。

「どうですか」
「目を瞑ってみて」
「口をすぼめてみて」
「ここの感触は左右で違いますか」
「大丈夫ですね」
「もう少しですよ。がんばってください」と河野先生。素直にがんばろうと思った。わずか2分程度の短い時間であったが心強かった。河野先生の言葉に安心したのか、眠ってしまった。・・・・・・・・・・つづく

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3月 4, 2021 · Posted in 聴神経腫瘍摘出 手術体験談  
    

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