今日、厳重に梱包してある荷物が届いた。
中身は何かなと思いつつ、開梱してみた。すると中から出てきたものは・・・・・、
「イサムノグチ」デザインのガラステーブルの木製脚でした。そうです、先日ご修理相談があったお客様からの荷物が届いたのでした。早速、塗り直し修理を行なう木製脚の現状を確認しました。お客様自身でニスを塗られたとか・・・・・。
う~~ん、木部表面全体に艶有りニスがガッツリと塗ってあります。元の色がどんな色であったのかわかりません。恐らくブラウン系統の着色ニスを使用されたのではないかと思います。
さらに詳しく見てみると、刷毛塗りのため、表面がゴテゴテしています。滑らかではありません。刷毛のあともあります。さらにニスの液だまりも見受けられます。たっぷりと塗られてしまっています。そのため本来の塗装色ではなかったテッカテッカの艶が出てしまっています。見た目、上品とはいえません。
さらにさらに詳しく見てみると・・・・、
やはり・・・、
よくあることとはいえ・・・、
ニスを塗られる以前の塗装を目の細かいサンドペーパーで削り落とされていません。一般の方がよくやってしまう方法で、現状の塗装の上に直接ニスなどの塗料を塗ってしまうんです。このようなやり方だと、塗装の上に塗装を塗ると、前の塗装にあとから塗った塗装がくっつかずに、短期間で塗装が剥がれてしまいます。今回の木製脚も、すでにニス塗りの塗装が剥がれている箇所が見受けられました。
塗装の上に塗装を塗る場合、元もとの塗装を全て落とす必要はないのですが、後から塗る塗装が密着するようにサンドペーパーで表面に凸凹の傷を付ける必要があります。凸凹といっても目に見えない細かい凸凹ですよ。傷を表面につけることで、後から塗る塗料が密着しやすくなり、短期間で塗装がはがれることがないんだそうです。
でもこの作業が大変なんですね。
直ぐにサンドペーパーは目詰まりしてしまい、何度も何度もこまめに取替えないといけないし、その内にサンドペーパーを持っている手も多少削っていることになるので、指の指紋が薄くなり、手や指がヒリヒリしてきますしね。四代目も実際に修理金額を安くするためにこの工程を職人に替わってやったものの、二度とやりたくないと心底そう思いましたからね。
でも職人は、根気の要るこの工程が仕上がりを左右する重要な工程だといい、決して手を抜きません。恐れ入り屋の鬼子母神です。
しかし、今回の塗り直し修理はこりゃ大変ダァ!!
同梱されていた資料を見てみると、お客様のイメージされている塗り直し後の希望色は「ウォールナット色」と指示されています。送られてきた現在の色とは全く違う色です。今は黄土色、これをこげ茶系のウォールナット色に・・・・。まっ、現在の色よりも濃くするので、塗装色自体には問題ありません。
ただし、送られてきた脚の元もとの色わかりませんし、ベツタリと塗られてしまったニスの問題もありますので、脚全面の塗装を全て削り落とす必要があります。ニスも、以前の塗装色もです。つまり塗装する前の木地の状態まで削り落とさなければなりません。これまた根気の要る作業となります。
お客様のご希望はさらにツヤもあまり無いほうがいいとのことですので、2~3分程度のほんのわずかなツヤにすることにしました。全くツヤのない全消し塗装では、多分お客様のイメージとは違うと考えます。今まで四代目が見てきたいろんな「イサムノグチ」テーブル脚のツヤのイメージに近い仕上げにすることとしました。
お客様には「ウォールナット色」の色見本板をご郵送して確認してもらいました。お送りした見本色でOKとのご返事がありましたので、早速、色見本板と一緒に塗り直す脚を職人の工房に持ち込みます。物は小さいものの、削り落とす手間を考えると割に合わない作業になるなときっと職人は思うんだろうなと考えつつ、安田屋家具店を出発したのでした。
数日後にはまったく違うきれいに仕上った脚となりますのでご報告いたします。