20数年ほど前にご婚礼家具としてご購入になられた「婚礼たんす」、いわゆる洋服タンスですが、その扉についている丁番金具が折れてしまい、扉が外れたとのご相談があり見てきました。
幅100cm前後の両開き洋服タンスが2本、幅50cm前後の片開きロッカーたんすが1本の3点セットでした。当時流行していたワインカラー色です。作りはしっかりとしています。現代のハリボテな家具ではありません。
扉についている金具を確認すると、案の定「アングル丁番金具」でした。それも今は現存していないサイズの金具です。扉の厚み24㎜、側板の厚み28㎜用の「24-28」です。カップ径も丸型ではなく、幅33、長さ45㎜のロケット型です。金具は長年の使用で変形してしまっています。また接合部も折れかかっています。
お客様のご要望をお聞きすると、扉のたてつけもずれているので、全ての扉の金具を取替えて欲しいとの内容でした。同じ金具は現存していないことをお伝えし、現在主流の「スライド丁番金具」に取り替える修理方法をお伝えしました。事前に扉をお預かりして、金具を取り替える作業を行い、その後お客様宅で取り付け施工を行なうという方法です。
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扉の状態を見ると、「アングル丁番金具」を使用しているため扉の木口が金具にあわせて切り込んであります。また金具のカップ径、形状が交換する金具の形状と違います。そのため現在彫り込んである穴と切り込み部分を一度埋木して、塗装をしなければなりません。本体側板に関しては現状のままでよさそうです。
どのタイプの「スライド丁番金具」を使用しなければならないか、たんすの状況を調べます。扉は業界用語で「カブセ」仕上げです。扉が家具本体側板の前に被さって取り付いている仕上げ方です。天板を見ると、天板は一般的によくあるタイプと同様で、扉の厚み分出っ張っています。これは問題ありませんが、天板と扉の隙間がほとんど無いことが気がかりです。しかしそれよりも・・・・、
扉の下部を見てみると、引き出しが付いています。そしてその引き出しの仕上げ方も「カブセ」仕上げです。引き出し上部と扉下部との隙間もほとんどありません。これは厄介な仕上げ方です。天板の出っ張り部分と、引き出しの出っ張り部分との間の空間に扉を取り付けないと、扉がどちらかに当ってしまい閉めることができなくなるからです。通常は、扉下の引き出しは扉の厚みよりも後方に下がっているか、隙間がもっと空いているかなので、扉取り付けにそれほど神経質にならなくても簡単に取り付けられるのですが、今回はかなり難しそうです。職人の技量が試されます。
さらに「スライド丁番金具」を選択するのに必要な家具本体側板の厚みと、扉の厚みを計ります。扉の厚みは25㎜で一般的なサイズです。ところが側板の厚みはなんと30㎜もあります。通常は25㎜までが一般的なので、特殊な「スライド丁番金具」を選択しなければなりません。当然金具価格も高くなります。
修理方法のご説明後、全扉を家具本体から取外し、金具取替えのためにお預かりしてお客様宅を後にしました。数日後には修理完了いたしますので、またご報告いたします。
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