若者世代で人気となっているカリモクの往年のソファー「カリモク60」シリーズ。その座クッションが痛んできたので張替がしたいとのご相談がありました。
F様からのお問合せ
カリモク60ロビーチェア、3シーター、ブラックを使用していますが、合成皮革のためひび割れています。 同色のブラックで、座面3枚を本革で張り替えしたいです。 見積もりお願いします。
安田屋家具店からの返信
カリモク60シリーズですか。還暦を迎えた四代目にとっては、それほどの家具じゃないと思うんですがね。当時はカリモク商品の中でも一番安価な事務所用のソファーでしたからね。当時いろんな事業所で見かけたものです。
ただ一般家庭ではない事業所使用を考えていたので、耐久性は高かったと思います。一番多い修理相談が、長年の使用で座面が落ち込んでしまったという内容だったですね。それが時代を経て「カリモク60」なんてしゃれたネーミングにして、若い世代に好評だとはねぇ。さらに新しいソファー(レプリカ)よりも、昔のソファー(オリジナル)の方が生地がいいとか、キルティングの仕上げ方が良いとか・・・・、座面が落ち込んでいてもヴィンテージが良いそうなんでね。
家具業界38年の四代目は、それはどうなんでしょうねぇーと思っちゃいますけどね。ただサイズ的には今のソファーには無いとってもコンパクトサイズなのは良いと思います。今ではこんなコンパクトなソファーは探しても無いですからね。あったとしても中国産のチープ商品しか無いですからね。
さて現在の座クッションカバーは合成レザー(ビニールレザー)です。座クッションカバーのみを本革で張替える(新しく作る)場合、1個税込80,000円程度になります。3個あるので合計金額は240,000円前後になります。中身のウレタン材の補充または取替費用は含まれていません。またクッションのみの往復の送料が別途必要です。
本革の場合、合成レザー(ビニールレザー)のように生地幅が一定ではありません。また本革材には牛が生きていた時にできた
傷や穴がありますので、使用できる材料部分が少なかったり、使用できない無駄な部分も材料費に含まれるから修理費用が高価になります。
本革で張替える場合、座クッションの裏側は空気抜けが必要となりますので、裏側は全面本革張りではなく、全体の3分の2程度が布張りとなります。
また座クッション表面にデザインとしてのキルティング加工がしてありますが、本革に同じキルティング加工をすると、切り取り線をあえて作るようなものなのでキルティング部分から破れやすくなります。キルティング加工するのはお勧めしません。
また同じようにキルティング加工をしても張替えない背面部分のキルティングと若干異なる場合が出ますのでご了承ください。
背面のキルティングと全く同じものはできません。
キルティングの無い仕上げが良いのですが、カリモク60シリーズは、このキルティング加工が一つのデザインなので、本革で製作する場合、キルティングが無い状態は違和感が出てしまいます。デザインを取るか、耐久性を取るか・・・・。
本来のキルティング加工は、本革を小さいパーツにして縫い合わせて座クッションカバーを製作するものです。本革材を無駄なく使用するための方法なのです。しかしこの方法で製作するとかなりの手間がかかりますので、製作費用は恐らく1個税込み12万円以上するものと思います。高価すぎるのでお勧めしません。
現在と同じ合成レザー(ビニールレザー)で張替える場合は、座クッションカバーのみ、または中身込みの座クッションをカリモクが部品として販売していると思いますので、一般の椅子張職人が張替えるよりも、カリモクの方が安価だと思います。
また写真のように座クッションカバーの表面が破れてきているということは、使用年数も経過しているので、クッション中身のウレタン材もへたりがきていると思います。座クッションカバーを張替えるのであればカバーだけでなく中身のウレタン材も同時に取替えられることをお勧めします。
修理の場合、カバーの張替のみ、ウレタン材の取替のみと単体で行うと、一緒に行う時よりも単価が高くなりますのでご注意ください。お役に立つ情報であれば幸いです。