有名なイームズのラウンジチェアー&オットマンです。



オシャレなラブ・ロマンス「昼下がりの情事」、都会派コメディ「アパートの鍵貸します」などの傑作を残したハリウッドの映画監督ビリーワイルダー氏は、1956年彼の友人であったチャールズ&レイ・イームズ夫妻に、自宅のリビング用の椅子を依頼して作った名作椅子です。イームズ夫妻が「よく使い込まれた一塁選手のグローブみたいな暖かい印象を持たせたい」と考えてデザインしたチェアだけに、ラグジュアリーな中にもどこか親しみやすさが感じられます。言われてみてから見たり座ったりすると高級感を持ちながらも、どこか親しみやすい雰囲気も持っていのことがわかります。ゆったりとしたレザーシートにプライウッドフレーム。 シェル部分は成形合板技術の粋と言われています。脚部は当時としては珍しい5本足。快適この上ないラウンジチェアはオフィスはもちろん、ホームシアターやオーディオルームにも適しています。シンプル派にも好まれる、グラマーな一脚です。
アメリカでは尊敬する人への価値あるギフトによく使われます。
このラウンジチェアー&オットマンの正規品は「ハーマンミラー社」が販売していて約60万円。リプロダクト(ジェネリック)商品は9万円前後で販売されています。価格の差が違いすぎますが、商品の品質もかなり違うようです。
四代目もこのイームズのラウンジチェアー&オットマンは、本物を見たり実際に座ったりしたことがある名作椅子です。・・・・が、修理をしたことはいまだかつて機会がなくありませんでした。今回修理に携わる機会を得ることができました。今回のご修理内容は、座面のボタンが取れてしまったので付け直して欲しいという内容でした。お客様自身はなんとかボタンを取り付けるために接着剤で取り付けを試みたとのことでしたが、直ぐに取れてしまうので安田屋家具店にご用命されたわけです。

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いったんお客様宅から安田屋家具店に持ち帰りました。
座面クッションがどのように取り付いているかが不明です。ボタンが取り付いていて、ボタン止めが見えていないということは、座クッションの裏側にボタン止めがあるということが考えられます。このような場合一般的には座クッションはネジで止めてあるのですが、それらしき取り付けネジが見当たりません。座面が取外せればボタンの取り付けは簡単にできるのですが・・・・、どうやって外すのだろうか????
座クッションの外し方を悩みつつ椅子を眺めたり触れたりしていて、ふと座クッションの前部を引っ張り上げてみました。すると「ベリベリ」という音がしました。

「これはひょっとして・・・・」
「マジックテープで止めてあるのかも???」
座クッション前部を少し引っ張り上げ、フレーム板とクッションの隙間に手を差し込んでみました。すると手にマジックテープの感触がありました。
「間違いない、マジックテープで止めてあるんだ。ベリベリという音はマジックテープがはがれる音だ」そう確信しました。座クッションを外すのに背もたれクッションの厚みが邪魔になっているように見えるので、座クッションを取外す前に、背もたれクッションを外すようにしました。背もたれ下部のクッションの上部の左右をつかみ、すこしづづ前に引っ張ります。すると「ベリベリベリベリ」という音ともに徐々に背もたれクッションが、フレーム木部から外れて(はがれて)いきます。そして背もたれクッションが外れました。フレーム木部にマジックテープが四方に付けてあります。座クッションも同様に四方にマジックテープがついているようです。
座クッション前部を引っ張り上げ、マジックテープをはがした部分に布地を差し込んで再接着しないようにします。次いで座クッション後部を引っ張り上げ、マジックテープをはがした部分に布地を差し込んで再接着しないようにします。一人で取外すのは無理なようなのでスタッフを呼び、二人で座クッションの前と後を持ちつつ、左側を引っ張り上げマジックテープをはがして、すかさず布地を差し込んで再接着しないようにします。次いで同様に右側を引っ張り上げます。三方がマジックテープからはがれていますので、力を入れなくても簡単にはがすことができました。同時にコロコロっと外れたボタン止め部品が床に落ちました。

背もたれ・座クッションを取外した状態です。
マジックテープが四方に付けてあるのがわかります。
こんな風に取り付けてあるんだと初めて知りました。
いたってシンプルな方法です。
1956年の製作時もやはりマジックテープだったんだろうか??、違う方法が時代の経過とともに発達した科学技術を取り入れて変化したのだろうか?? 1956年当時のオリジナルな方法を知りたいと思ったのでした。
取外した座クッションの裏側を見ると、しっかりと取り付いている片方のボタン止めが見えます。その反対側にボタン取り付け用の穴が開いているのがわかります。


ボタンもボタン止め部品もそろっていますので、針に取り付け糸を通してからボタンに針と糸を通します。糸はナイロン糸を使用しますので切れる事はありませんのでもう安心です。座クッション表側から裏側の先ほどの穴を探りながら針を刺します。見事裏側の穴に針を通しえたら、ボタン止め部品に糸を通してしっかりと結びます。


取外した順番と逆順で、座クッションをフレーム板についているマジックテープに接着させていきます。位置決めが重要なので、二人掛かりで作業を行いました。取外す前と同じ場所に位置を決めてフレーム板に座クッションを押し付けて取り付け完了。最後に背もたれクッションも同様に取り付けて修理完了です。
今回の修理費用は税込5,000円でした。(往復の送料は別途です)
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