一昨日まで3日間「象谷塗」商品として、尺盆、銘々皿、茶托をご紹介いたしました。
ここで「象谷塗」の製造工程についてもう少し詳しくご紹介します。
【 象谷塗ができるまで 】
木固め
材料である栃の樹をくりぬいた白木地に生の漆だけを使い塗り込んで行きます。
これにより木固めを行います。
これから行う全ての工程の基となる、たいへん重要な作業で す。
木地研ぎ
ロクロを使い木地を研ぎつけていきます。
この作業により、表面をなめらかにすると同時に、次の塗りとの接着具合を良くする効果もあります。漆器を造る場合 の研ぎには、水と耐水研ぎペ-パ-を使った水研ぎを多用します。何回も塗り重ねる場合などには、塗りと塗りの工程の間に、この水研ぎの工程が入ります。
例 えば5回塗り重ねる場合には、水研ぎが塗りと塗りの間に4回入ります。
この水研ぎに使う耐水ペ-パ-は、工程が進むにつれて 表面が粗いペ-パ-から細かいペ-パ-へと使い分けて行きます。
塗り重ね
ふたたび生漆だけを使い数回塗り重ねを行います。
塗りと塗りの間には水研ぎの工程が入ります。漆は1回塗ると1日は乾きません。
つまり5回塗り重ねる場合 は最低5日以上の日数を必要とします。
また、塗りを入れた後は、その表面がしっかりと乾いてから次の工程へ進むことが重要となります。
塗り込み
生漆を接着剤代わりにして、まこもと呼ばれる黒い粉末(川辺に自生するコモガヤの一種で、黒い実の部分を磨りおろして、黒い粉末にします。おもに漢方薬な どに使われています。)を塗り込みます。
象谷塗りは、この黒い粉末が木地の渦文様の中に入り込み、渋味のある黒色のツヤを生み出します。
漆は基本的には耐 水性を増すための塗料として使われてきましたが、時にはニカワや餅米と混ぜて、接着剤代わりに使用することもあります。先人たちは、漆を万能塗料として 使っていたようです。
ツヤだし
ふたたび、ロクロを使って表面を研ぎつけた後、生漆を使ってツヤを付けて行きます。
この工程が渋味のある黒色半ツヤの基になります。
このツヤ付けの工程 は、奥深いツヤを出すために、数回に分けて少しずつ行います。
2~3回でツヤを付けてしまうと、表面だけからはツヤが出ますが、器物の奥からの重みのある ツヤは出てきません。
漆独特の奥深いツヤは、この工程を数回に分けて行うことで生まれてくるのです。
漆器を造る場合は、決して急がないことです。
上塗り
渕の部分を研ぎつけた後、渕に黒漆で中塗りを入れます。
(中塗りとは、仕上げ塗りを入れる前に行う、下塗りのことです)
もう一度、渕部分を研ぎつけて黒 漆で上塗りを入れます。
(上塗りとは仕上げ塗りのことです)
渕が塗り上がったら、最後に生漆を使い全体のツヤを整えて完成となります。
日数として30~35日で仕上がります。