O様から、曲木家具で背面と座面が籐シートで張られているロッキングチェアーの張替相談がありました。
O様からのご相談
40年位前に購入した物です。 作りは木ですが、座面と背中部分は籐でできています。 籐の張り替えを悩んでいます。 修理金額を教えてください。
安田屋家具店からの返信
写真から判断すると秋田木工製の曲木家具のロッキングチェアーだと思います。木部材質は「ブナ材」です。背面・座面は籐シート材「五分カゴメ編み籐シート」を使用しています。
籐シートの張り方は、一般的な「溝決め込み仕上げ」ではなく、手編み仕上げとなっています。
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そのため張替方法は現在と同じ「手編み仕上げ」と、木枠渕周りに溝を彫る加工を施し一般的な仕上げ方である「溝決め込み仕上げ」に改良した場合の2種類あります。
まず現在と同じ「手編み仕上げ」での張替費用です。手編み仕上げの修理期間は約2ヵ月必要です。
【手編み仕上げによる張替】
背面 税込 168,000円
座面 税込 135,000円
次に、張替費用を安価にする方法として、現在の「手編み仕上げ」を一般的な籐シート材張り方法である「溝決め込み仕上げ」に改良しての張替があります。方法は、背面・座面共に木枠フレームに溝を彫ります。その溝に籐シート材をはめ込み、その上から丸芯材を打ち込んで仕上げる「溝決め込み仕上げ」です。「溝決め込み仕上げ」に改良しての修理期間は約2週間です。
【溝決め込み仕上げに改良しての張替】
背面 税込 36,000円
座面 税込 24,000円
以前行った溝決め込み仕上げへの改良事例です。
「溝決め込み仕上げ」の強度・耐久性は、「手編み仕上げ」に比べて低くなります。「手編み仕上げ」の強度・耐久性を100とすると、「溝決め込み仕上げ」の強度・耐久性は50と半減します。
ロッキングチェアーの座面面積が大きいので、座った時の荷重を受けとめる補強材を座面裏に入れることをお勧めします。
補強材は籐皮を撚った籐バンドを十文字に取付ける「十文字補強」と、井桁状に取付ける「井桁補強」の2種類あります。
「溝決め込み仕上げ」で張り替え、「十文字補強」を取付けた場合の強度・耐久性は100となり、手編み仕上げとほぼ同じとなります。
「井桁補強」を取付けた場合の強度・耐久性は150と、手編み仕上げよりも他よくなります。
ただしこの数字は理論上であり、実際の使い方によっては数字上の強度は得られない場合がありますのでご了承ください。
十文字補 税込 5,000円
井桁補強 税込10,000円
補強材取付費は、張替とは別に必要となります。
籐シート材の品質が年々落ちています。
そのため張替に使用する籐シート材の強度・耐久性も昔に比べて低くなっているようです。
現在では籐シート材を座面に使用する椅子はほぼ見かけなくなりました。購入後すぐに破れてクレーム対象となる確率が高いからです。手編み仕上げ加工は、高級家具にしか採用されなくなってしまいました。
昔は内職で籐シートの手編みを行う人が多数いたのですが、高齢になりやめてしまいました。そのため手編み仕上げ加工を行う人がいなくなっていることが、張替金額が高額になっている理由です。
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