K様からご相談があった祖母様のロッキングチェアーの座面の籐シート張替に関して、座面のみの部材が届いた。早速確認してみた。
五分カゴメ編み籐シートが使用されていて、溝決め込み仕上げで加工されている。一部分、籐シート材を押さえ込んである籐丸芯材が溝から外れてしまっている部分があった。張り替えるので特に問題はないです。
裏側を確認してみると、渕周りの木部フレームの一部に割れが生じていた。よーく確認してみると・・・、
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むむむむむ、木部の渕周りの割れがちょっと問題発生です。籐シート材を押さえ込む為に籐丸芯材をたたき入れる溝部分が欠損している状態です。これでは溝部分が欠損していると、籐シートを押さえ込む為に溝に籐丸芯材を籐シート材の上から一緒に溝にたたき入れ固定することができません。 直ぐに職人工房に行き、修理可能か見てもらった。
溝の土手部分が一直線に割れている場合は接着固定することができるようですが、今回の欠損状況は損傷が大きく、割れた個所とさらに木部が裂けてしまっている部分があります。そのため破損部分が細かく割れたり、裂けたりしていますので、接着固定ができません。
また接着固定ができたとしても、溝の土手部分には籐シートを張った後、座って荷重がかかると籐シート材に引っ張られる大きな力が加わり、接着固定ではその力に耐えられず、接着した個所がまた割れてしまいます。
さらに座面裏側に取付ける補強材(十文字補強、または井桁補強)は、木部フレームに穴をあけて籐皮材を取付ける方法となります。そのため木部の強度が無いと取り付けられません。今回の場合、破損部分を再接着できたとしても強度不足が生じますので、補強材の取付はできません。
木工職人に見てもらうと、今回の損傷の修復はできないと連絡が入りました。また座面を曲木加工で作られていますので、同様の座面を作る職人はおりません。
籐職人に再確認したところ、座枠の木部の溝が一部でも欠損している状態では、籐シート材の張替はできないとの回答でした。
フレーム木部の割れた個所をよーく確認すると、割れた木部と籐シート材にボンドらしき接着剤が付いていました。
このことから木部が欠損した原因として考えられるのは、溝に入っていた籐丸芯材が抜けてきたことで、恐らくボンドだと思いますが、抜けてきた芯材と籐シートに接着剤を付けて溝に押し込んで修復したことが見受けられます。
接着剤を使用して固定修復をしたものの完全に丸芯材が溝に固定されていないことが原因で、座った時の荷重で徐々に籐シート材が座面下に引っ張られ、接着剤で一緒に付いている丸芯材も一緒に下方に引っ張らける力が加わり続け、さらに接着剤で一緒に付いている溝の土手部分の木部にも力が加わり続け、最終的に土手部分が割れたり、裂けたりしたものと考えられます。
木部フレームの溝の修復ができない状態での籐座面シートの張替はできません。
今回はK様から安田屋家具店に張替依頼をいただきましたが、残念ながら張替はできないこととなりました。お預かりしていた座面シート部材を梱包して、K様宅にご返却する作業を行う四代目でした。
K様、お役に立てず、また大切な祖母様のロッキングチェアー修理ができず誠に申し訳ありませんでした。
【教訓】
籐シート材の渕周りの籐丸芯材が溝から飛び出てしまったり、外れてしまった場合は、絶対にボンドなどの接着剤で修理しないことです。今回のように木部の溝部分の破損につながります。木部、特に溝部分が破損すると籐シート材の張替ができません。
丸芯材が外れたり、一部浮いた状態になっているのは張替時なので、必ず専門店での張替修理をしてください。お客様自身で修理しようと考えると、後々大変なことにつながります。ご用心ください。
追伸
ロッキングチェアーが「秋田木工」製の商品であれば、「秋田木工」に修理の相談をされることをお勧めします。ひょっとすると座面木枠フレームを在庫しているかもしれません。または曲木治具がありますので、座面木枠フレームを作ってくれるかもしれません。
ただ「秋田木工」は現在、「大塚家具」の子会社となっていますので、注文や依頼、相談に関して一般の家具店からはできません。一般のお客様が直接ご相談されれば対応して頂けるものと思います。秋田木工の下記ホームページをご覧ください。
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