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UV塗装の落とし穴・・・・

 先日、会議用テーブルのご修理に関する依頼があったので見に行ってきました。大きな会社の役員さんが使用される大型会議用テーブルでした。半径900㎜の扇型のRコーナー天板×4卓、長さ1800×奥行900㎜の長方形テーブル×2卓を組み合わせたシステム(組立式)オフィス家具でした。

 あっ、どこかで見たようなデザインだと思っていましたら、ご担当者様から「カリモク製」とお聞きしました。そうそう、カリモクのカタログに掲載してあったと思い出しました。総幅3700×総奥行1900㎜で、12脚の椅子がセットされていました。

 ご修理内容としては、長年使用したことにより天板表面の塗装色が色あせしてしまい、バラバラの色になってしまっている。天板前面に擦り傷、凹み傷、輪ジミ跡があるので、天板を塗り直したいとのことでした。今までの経験上、通常の天板塗替えと変わらないと考え「御見積もりさせていただきます」とお答えしたのでした。ただし天板仕上げが「突板」材なので、無垢材と違って削りすぎることができないので、若干の凹み傷は残る可能性があること、また色あせによる下地の色が各天板それぞれ微妙に違ってしまっているので、塗装色を濃い色にしても若干色の違いが出てしまうことなどをお伝えしたのでした。

 そして会社に戻り、まずは古いカタログで商品を確認。2002年版カタログを見るとありました。

拡大してみましょう。

 組み立て式となっているので、天板のみを買い換えられて新品と入れ替えるという方法もご提案できると考えました。そこでまずは製造元である「カリモク」担当者に連絡。すると意外な答えが返ってきました。

 「エグゼクティブオフィスシリーズは、7年前に製造中止となっています。7年も経過しているので、型などが工場に残っていないので新しく天板を製作することはできません」。そうかぁー、最近のカリモクのカタログで見た記憶がないもんなぁー。7年前に中止か。ということは天板入れ替えというご提案はダメですね。では天板塗替え修理は同だろうと聞くと、四代目が想像していなかったお言葉が・・・・。

 「エグゼクティブオフィスシリーズは塗装がUV塗装となっています。さらに天板仕上げがウォールナット材の突板仕様です。そのため塗装を削り落としたり剥がすことができません。削り落とそうとすると突板まで削ってしまうことになってしまいます。またUV塗装は塗装面が固く、再塗装をする場合に必ず必要な表面に細かいキズをつけることができません。」とのこと、えっえっえーーー!!!!

 そ、そ、そうなんだぁーー!!!
 そう思った四代目の耳に「工場の職人に確認しないとなりませんが、通常UV塗装の場合は塗り直し修理はできないです。ただ方法としては、凹み傷に関しては瞬間接着剤などを充填して凹みをなくし、天板表面全体をスチールウールで細かい傷をつけてクリアー塗装をすることはできるのではないかと思いますが、輪ジミや色あせによる色の変化はそのままとなります。色を濃くしたりと変えることはできません」そ、そ、そうなんだぁーー!!!、UV塗装ってそうなんだぁーー、初めて知りえたことでした。家具修理の奥はまだまだ深いものがあります。カリモク担当者さんには工場の職人さんに確認してもらい、可能な修理方法とその修理金額の連絡をいただくことを約束して受話器を置いたのでした。

 しかしなんですね。
 組立式家具となっているのだから、将来的に一番消耗する天板だけは取り替えられるような体制をとって受注生産ができるようにするのは当然だと思いますね。日本国内で最大の家具工場「カリモク」さんなんだから、当然将来のことを考えるべきところだと思います。でないと使い捨て家具となってしまい、高価格な粗大ごみ的家具を販売していることとなりますからね。

 というよりも、販売後の買い替え需要として十何年後には天板だけ取替えたいとの需要が出てくるはずなんですから、それはカリモクさんの売上、利益にもつながることなんですからねぇ。そういう将来的なことをカリモクさんに限らず、日本国内のほぼ全ての工場は考えてないですもんね。こういう考え方がヨーロッパの家具作りと完全に違うところですね。寂しいもんです。

 四代目は思うのですが、各メーカーとも商品の型枠などを生産中止後に破棄してしまうらしく、その後作ることができないようなんですが、商品製造の時の型枠はその工場にとっての財産だと思うのです。それを簡単に捨ててしまう日本国内の家具工場の考え方がわからない。図面や型は財産ですよ。それさえ残っていれば将来作ることができるんですから。そう四代目は思ってしまうのですが、工場には工場の事情とか考え方がきっとあるんでしょうね。ぜひ一度それをお聞きしたいと思います。

  さててUV塗装について再確認してみました。
 化粧品のCMで良く耳にする“UV” これはUltraviolet rays (ウルトラヴァイオレット・レイズ)の略で紫外線のことです。その紫外線を照射することによって硬化するUVハードコート塗料です。UVハードコート塗料を用いて塗装するのがUV塗装です。ドイツで開発されたこのUV塗装は、塗料樹脂を熱ではなく紫外線(UV)で硬化させる方法で、それは従来の塗装では得られない硬度により耐磨耗性・耐熱性・高品質をもたらしました。

 簡単にいえば紫外線を照射することにより、クリアー塗装膜の表面を硬化させ、傷をつきにくくする塗装です。ある時期からこのUV塗装が一つのセールストークとして流行しました。何でもかんでも「UV塗装です」と付加価値が付いたものです。しかしその当時、塗り直し修理ができないなんてことは情報として教えてもらっていません。硬くて傷がつきにくいことだけを教えてもらいました。今となっては、UV塗装とは高価格の使い捨て家具なのかと思ってしまいます。

 UV塗装とは、紫外線を照射すると硬化する特殊な塗装なので、UV塗料に人工紫外線を照射することで硬化させる塗装方法を行ないます。非常に硬度が高く、耐摩耗性、 耐薬品性、耐溶剤性が、通常の塗装より優れ、傷が付きにくい反面、修理は非常に難しいです。水ぶきできお手入れは簡単。食器棚の扉やテーブルの天板によく使われます。特殊な設備の塗装工場でしか、塗装出来ないので、コストは高めと成ります。また、機械設備の種類で、塗装できる形状や大きさが、制限されます。キッチンの扉等に使用される場合が多くあります。

 いつもダイニングテーブルの塗替え修理を依頼している安田屋家具店の職人さんにも確認してみましたが、やはり答えは一緒。UV塗装は硬いので塗り直し修理はできないとのことでした。天板材質が無垢材であれば、大胆に表面を削ってしまい木地状態にしてしまえば再塗装はできるものの、突板仕上ではそこまで削ることはできないので無理だとのことでした。

  えらいこっちゃーー!!!、
 ご提案方法を再検討しなくてはなりません。
 新規商品をご提案すべき、いろいろなカタログを探しましたが、現在この手のデザインの会議テーブルはどの工場も定番商品として持っていないようで、どのカタログにも見当たりません。どないしょーーー!!!!
スタッフと会議を行い、いろいろな取引先担当者と連絡を取り合い、現在その連絡待ちとなっています。ここ数日は眠れぬ夜となりそうな大問題発生です。しかし、解決しなくてはなりません・・・・。つづく

皆さん、UV塗装仕上げは塗り直しが出来ません。
いわば高価格の使い捨て家具となってしまいます。知らなかったぁー。

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1月 25, 2011 · Posted in テーブル修理  
    

Comments

One Response to “UV塗装の落とし穴・・・・”

  1. 匿名塗装職人 on 9月 24th, 2020 5:38 PM

    クリア塗料に入れる色の割合を変えて数種類の濃さの塗料を作り、同一シリーズではない別々の天板を持つ家具を色合わせ塗装した経験があります。
    完全とは行きませんが、何とか同じ色と認識出来るまでには合わせられました。

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