岐阜市のT様から、祖父母様が使用されていたロッキングチェアーの座面が籐張になっているが、張替ができるかのご相談があった。早速現物を確認した。
曲木家具で有名な「秋田木工」の5-RUというロッキングチェアーではないかな。座面をよく見ると・・・、
なんと座面の籐シート張りは「手編み仕上げ」になっています。
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手編み仕上げということは少なくとも40年以上前の商品です。
でもご安心ください。
現在と同じ「手編み仕上げ」での張替はできます。ただし張替費用は、約10万円前後とかなり高価になります。
安価に張り替える方法もあります。
それは・・・・、
現在の「手編み仕上げ」を、現在の一般的な張り方である「溝決め込み仕上げ」に改良する方法です。
修理内容は、現在の籐シートを除去します。手編み仕上げなので、1本1本籐材を入れる穴が座面木枠に点々とあいています。
この穴を中心にして、籐丸芯材をはめ入れる溝を彫ります。そしてその溝の上に籐シート材をのせ、その上に直径4mm程度の籐丸芯材をのせて溝にはめ入れて接着します。張替後は、何度でも張替が可能となります。
ロッキングチェアーの座面は、横幅約450mm×奥行約450mmと面積が広いです。
籐シート材は荷重がかかると下方に伸びます。座面面積が広いと伸びやすくなります。使用し続けると伸びきった籐材がプチンと切れます。
そのため荷重を受けとめる補強材を、籐シート材の裏側に取付けます。補強材は籐皮を撚った籐バンドを十文字に入れる「十文字補強」とさらに強度な井桁状に入れる「井桁補強」があります。
十文字補強
井桁補強
手編み仕上げの強度を100とすると、今回改良する「溝決め込み仕上げ」の強度は50となります。そこに「十文字補強」を入れると強度が50追加され、手編み仕上げとほぼ同じ強度となります。「井桁補強」は強度が100追加されるので、手編み仕上げよりも強度が高くなります。
今回のロッキングチェアー座面の面積では「十文字補強」で十分です。
張替に使用する籐シート材は、カゴ目が少し大きい「五分カゴメ編み籐シート材」を使用します。強度が一番強い編み方です。
無着色の生地仕上げで張り替えますので、張替当初は白っぽい色となりますが、年数が経過するごとに徐々にアメ色に変化し、最終的には張替時と同じ色になります。この籐シート材の色の変化を楽しむのも一興です。
さて修理費用ですが、2022年になってからコロナ禍の影響で海上輸送費が4倍以上値上がりしました。さらに籐シート材の原産国であるインドネシア経済の急成長による物価高のダブルパンチで、過去記事でご紹介している費用よりも張替費用が高くなっています。
座面サイズ(幅44.8×奥行45.3cm)
五分カゴメシート生地仕上げ材
座面張替費 税込 18,000円
溝彫加工 税込 7,800円
十文字補強 税込 6,500円
往復送料 無料サービス
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税込合計金額 32,300円
今回のT様は岐阜市内ですので、引取・納品は当店が行いますので往復の送料は無料サービスいたします。 ご遠方の場合はお客様宅から当店、当店からお客様宅までの往復の送料が必要です。座面のみ、又は背面と座面の両方を張替える場合も、座面・背面部材をロッキングチェアー本体から取外して発送すれば、送料は安価となります。取外しは簡単なのでお試しください。
尚、「溝彫加工費」は初回のみの費用です。また「十文字補強」もまず切れることはありませんので、初回のみの費用です。
今回張替修理をした後は、通常の張替費用のみでできますのでお値打ちになります。
修理期間はお預かり後約2週間程度です。
籐シート張りの椅子、ロッキングチェアーは現在ではほぼ見られない商品となりました。とっても貴重ですので、ぜひ張替をお勧めします。
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