広島に工場があるマルニ製 ダイニングチェアーご修理見積依頼がありました。
修理内容としては、背もたれ部分の籐シートの張替え、座面布張りの張替え、脚木部の接合部の外れです。籐張職人、椅子張職人、木部職人の3人にそれぞれ見積をさせないとなりません。1脚の椅子でもいろんな分野の職人の技術が必要となります。
椅子を確認すると・・・・、
四代目には記憶の無いデザインの椅子です。
安田屋家具店の資料庫に行き、マルニのカタログで商品を発送いたしました探します。1990年版カタログに掲載してありました。
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マルニのデザインの中では一般的な普通のデザインです。商品名は「No.2125 クリーフGCダイニングチェアー」 23年前の価格は税別1脚18,000円です。
商品説明を見てみると「座面布地が取り替えられるカバーリング」となっています。カバーリングといっても23年前の商品のカバーの在庫はさすがにありません。また23年間張替えずに使用されていますので、布地の汚れはもちろんのこと、中身クッション材もつぶれてへたっているものと思います。カバーリング方式の椅子でも、15年以上経過すると中身ウレタンクッション材の劣化がありますので、中身クッション材の取替えが必要になってきます。
背もたれ部分の籐張りは、一般的な「溝決め込み仕上」です。使用している籐材は「五分カゴ目編みシート」です。木部フレームと同様にウレタン塗装で着色が施してあります。
籐シートの場合、着色仕上げを行うと籐材の弾力、粘り気がなくなり、耐久性は落ちるそうです。でも工場サイドは、耐久性よりも見た目を重視します。そのため木部フレームと同色で仕上げる場合が多いようです。
今回の見積もりは「生地仕上げ無塗装」と「着色仕上」の2通りの見積をご提案いたします。多分、耐久性の低い「着色仕上」の方が塗装代が加わるので高くなりそうです。
脚木部の接合部の外れは、強力な接着剤を入れて固定治具で圧着すれば問題なく補修できます。以前にもお伝えしましたが、工場で生産するときにしっかりと接着剤を塗って接合すればこのような外れは出ないのですが、たっぷり接着剤を塗ると、接合時にはみ出した接着剤を丁寧にふき取る工程が加わります。そのため大量生産時にはこの手間を省くために、接着剤が絶対にはみ出さないように木部の先にほんの少し接着剤をつけるだけで接合してしまいます。
木部の外れ補修を行う時、ほとんど接着剤が付いていない場合が多々あります。コストダウンのために行なっていることですが、耐久性は低くなります。ちゃんとした工場では手間を省かず、耐久性を重視します。でもその分販売価格が少し高くなってしまいます。すると「売れない→コスト削減→耐久性が落ちる→粗大ゴミ」こんな悪循環がまだまだ多い日本の家具です。
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