さてこれは何でしょう。
材質は桐材です。
お客様から想い出の家具なのでリフォームして使用したいとのご相談があった。早速見に行くと、むむむむむ、何の家具????、と一瞬とまどうものの、直ぐにわかった。皆さんは何の家具だかわかりますか。
手許たんすのような、それにしては側板の造りがとても雑な作りです。単に切りっぱなしの板を無造作に貼り付けたようです。
ヒントは正面の枠周りの出っ張りです。
もうおわかりですね。
この家具は何かにはめ込んで使う家具なんです。で、何にはめ込むのかというと・・・・・、
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それは金庫です。
金庫の扉を開けると、上が観音開き扉で、下が引き出しになっているお馴染みのデザインです。見覚えがあるという方も多いのではないでしょうか。金庫の中からこの桐製収納部を取外すと、見たことあるけど、何だろうと四代目が思ったように直ぐにはわかりません。
長年使用されていた金庫を廃棄されることになったのですが、長年使用していた想い出がある大切な金庫だったので、その想い出を残したいと内部の桐材収納棚を取り出したそうです。そして金庫本体はすでに処分されたとのことでした。
金庫の内部に入れるので、側板の見えない部分は切りっぱなしの板を使用してあるんですね。材質は桐たんすと同じなので、まずは桐たんす洗濯と同じ作業を行ないます。金具を取外してお湯で洗い、表面を多少削ります。木部の割れ部分には桐材で埋め木します。修理後は金庫に入れるわけではなく、お部屋の中で手許たんすとして使用されるので桐たんすと同様に「トノ粉」仕上げを行います。
切りっぱなしの板を使用している側板・天板には、桐無垢板を貼って凸凹をなくし、きれいな表面仕上げを行います。この部分も「トノ粉」仕上げをするか迷うところです。「トノ粉」仕上げを行うと、天板上に直接ものをのせたりできませんし、少々デザイン的なことも考えて見ましょう。
側板・天板には、桐無垢板を貼って、この部分はこげ茶色の塗装仕上げを施し、正面部分は「トノ粉」仕上げをしてツートンカラーにするというのはどうでしょうか。イメージ的にはこんな感じです。
なかなかおしゃれな手許たんすになるのではないでしょうか。和室はもとより洋間においてもおしゃれなインテリアになります。とても元が金庫の内部だったとは思えないでしょう。このイメージをまずはお客様にご提案してみます。
ところで何故金庫の内部に桐材の収納棚を使用されているかご存知ですか。実は桐材は燃えにくい木なんです。桐材の発火点は425℃と言われています。木材の中では燃えにくい材料ではありますが、薄い材料だとさほど他の木材と差がないように思います。ただある程度の厚さ(20㎜以上)になりますと燃えにくくなります。特に表面が炭化し水等の水分を含むと殆ど燃えない状態になります。火事で桐箪笥の表面が真っ黒になっているのに中の着物が無事だったというのは火事で水をかけられ箪笥の隙間は膨張し気密化され表面は水分を含み燃えないためです。(しかし、煙の臭いは付いてしまう様です)
もう間もなく洗濯修理が仕上がるようなので、どれだけきれいに甦ったのかを次回ご紹介します。
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