お客様からこんなお問合せがあった。
「お尋ねします。30年ほど使わなかった和箪笥の引き出しのカギが空回りして開きません。1個は空きましたが・・・。壊してもいいのですが、とにかく開けたいのです。教えてください」
切羽詰った様子がうかがえます。
安田屋家具店の実店舗でも、時々このように開かなくなったたんすの引き出しを開けて欲しいというご依頼があります。たんすのカギの構造、そしてどんな風に取付いているかを知っていれば、それほど難しくなくカギの掛かった引出しを開けることはできます。ただし木部や塗装面に凹み傷や擦り傷などが付いてしまうことが多々ありますので、十分ご注意ください。
ご遠方のようなので直ぐにメールにてご返信しました。
荒業となり、若干たんすにキズを付ける可能性が高いですが 強制的にカギのかかった引き出しを開ける方法をお教えいたします。 まずたんすのカギは一般的にカギをかけるとカギの出っ張り部分が 6㎜ほど上に飛び出ます。
カギが開いている状態
カギをかけた状態
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飛び出た凸部分は引き出しの上にある たんす本体の横板のカギ部分のでっぱりが入るようにあけられた 穴にはまることによって、カギがかかった状態となり引き出しが 開かなくなるという構造です。
そのため強制的にあける場合は、引出しのカギ付近の 引出し上部とたんす本体の横板との間にマイナスドライバーを 差し込んで、横板を上に6㎜ほど押し上げることができれば カギの凸部分がたんす本体の横板の穴から抜けますので カギがかかった状態でも引き出しを開けることが可能となります。 ただし開けたい引出しの上の引出しを抜き出しておくことが必要です。 あけたい引出しの上に引出しがあると、横板を上に押し上 げることができませんので、上の引出しもカギがかかっていて 取外せない場合はこの方法はできなくなります。
しかしその場合でも少しでも引出し上部とたんす本体の横板の間に 少しでも隙間ができれば、隙間を開けたまま、他のマイナス ドライバーで、カギの凸部分を下に下げるようにこするか、 もしくは隙間に金ノコの刃を差込んで、根気よく、カギの 凸部分を切断する方法も考えられます。 尚、これらの方法は、引出しの上部木口とたんす本体の横板に 凹みキズ、擦り傷がつくことが考えられますので十分ご注意ください。
さて上記の方法でも開かない場合は、最終手段です。
ここで重要なのは、カギがどのように取付けてあるかを知っていることです。恐らく普段そんなことを気にして引出しの開け閉めをしている人はいないと思いますので、カギがどんな方法で取付いているかを知っている人は少ないでしょうね。一般的にたんすのカギは細い釘で取付けてある場合が多いです。 中にはネジで取付けてある場合もありますが、小さなネジを 使用している場合が多いです。
暇な時があったらご自宅のたんすのカギがどのように取付いているか一度確認されることをお勧めします。一度見ておけば覚えているものですから・・・。さて、カギの取付け方がわかったら・・・・・、
鍵穴にプラスドライバーを差込んで、金づちでドライバーを たたいて、カギを強制的に取外す方法です。カギが外れるまで ドライバーを金づちでたたきます。 引出しの場合、木部は柔らかい桐材を使用していますので、 釘の場合は木部をあまり傷付けることなくカギが外れますが、ネジの場合は、少々木部が欠けたりする場合がありますので知っておいてください。ただし引出し内部なので、外観からはそれらの キズは見えることはありません。
この最終手段で開かない場合は、たんすを壊すしかありません。 根気よく上記2種類の方法を行なえば、大抵の場合は開きます。
マイナスドライバーでこじ開ける方法は、泥棒が忍び込んだ家でやる方法です。安田屋家具店の実店舗でも、ご自宅に泥棒が入られて、この方法で鍵の掛かった引出しを開けられてしまったケースが過去に数回ありました。引出しの中身の被害よりも、引出しに大きくキズが付いてしまったために、その木部修理、塗装修理費用の思わぬ出費に皆さん落胆されてしまいました。
家具は木製なので、金属製と違って、簡単にこじ開けられてしまいます。またカギをかけた引き出しは、こじ開けられる時に大切で高価な家具が上記のように大きく破損したり、傷付けられてしまいます。たんすのカギは、あくまでも気休め程度の役目だと思ってください。木製の家具にカギが付いているといって貴重品を収納することは、貴重品が盗まれるだけでなく、家具も傷付けられてしまい、二重のショックを味わいますので、できればたんすのカギは掛けない方がよいのではと思います。ご参考までに・・・・。
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